公立病院のこれからを考える~紀ノ川市公立病院創立記念講演会:那賀病院~
10月24日(月)紀ノ川地区の中核病院としての役割を果たしている那賀病院から 創立記念講演会としてお招きいただきました。
全国の公立病院の多くは 市民のためにということで 医師や看護師の確保のための高度医療体制や市民の期待に応えるための多様性が求められ かかりつけ医にもなり高度急性期も担うといった 医療改革の柱である医療機能分化とは逆行し 忙しい一方で医療経営的にも大変厳しい状況に追いやられています。地域包括ケア時代において 住民のための医療をどう今後展開していくか このままの継続ではなく 大きく舵を取るべき必要性を痛感されています。那賀病院もその一つで 病院幹部や行政職員は 現状の打開に懸命であり その一環として私を呼んでいいただいたことがひしひしと伝わります。
唯一の道が 地域密着型の病院を目指し 在宅医療や介護との連携強化であることは認識されていますが それが“生活に戻すための医療”つまりQOL・QODを重視した医療の方向への 大転換期であることとは まだ受け止められていないのが現状だと思います。公立病院に大学等から派遣されている医師の多くは 診断・治療が任務であり 本音のところ 生活に戻すとか地域との連携といったことへの認識は低く 例え認識していても そこまで手が回らないといった現状です。医師主導が基本である急性期病院の体制は せいぜい地域連携室の強化(在院日数短縮化を目的とした入退院支援センター)止まりで 病院全体が“生活を分断しない”“生活に戻すため”を目標とした医療への展開には まだまだ至っていません。
この閉塞感から脱却し “元気高齢者を育成支援するための医療”を推進するといった 地域包括ケア時代の共通のベクトルに乗ることが重要であり 公立病院の意識改革・体制改革に 地域関係者や市民とともに取り組んでいかなければなりません。地域密着型病院の使命として 公立病院が地域のけん引役として 生活を軸足とした看護師のアイデンティティの賦活化による 生活に戻すための多職種連携(チーム医療)が病棟や外来・病院全体で推進されることを期待するばかりです。