市民の真のニーズに応えるために 自ら市立病院の経営を立て直す~甲賀市立信楽町中央病院懇談会~

   

12月1日の夕方、誰もがあの愛らしい目の狸の置物(信楽焼)でご存知の、甲賀市信楽町にうかがいました。サンタさんの服を着た狸など、町中に大小さまざまな狸が、人口よりも多いんだろうと思いますが、所狭しと並んでいます。その地域を支える、家庭医や総合診療を特徴とした医療を展開されている甲賀市立信楽町中央病院(中島恭二院長)の座談会に招かれました。病床数は40床で稼働率は5割程度、認知症や寝たきりなど地域に返せない患者を抱えながら、医療経営も市から毎年2億円補填している状況。全国にはこのような状況の公立病院は少なくありません。公立だからこそ、経営を前面に出せないしがらみがその一因だと思います。おそらく多くのコンサルタントは、経営を考えると、診療所にするか廃止するかをアドバイスするだろうと想像できます。しかし座談会に参加して、その考えは一掃されました。自治医大出身の中島院長と県から5名の自治医大卒の医師が派遣され、日々在宅医療に積極的に取組んでいること。看護師やMSWをはじめ薬剤師や検査技師他、地域や当病院を愛する気持ちが強いこと。市としても立て直しを前提に検討していること等々、ピンチの陰にチャンスが見えました。そして会議室に、院長や副院長、看護部長や師長、事務長など、あふれんばかりの職員が集まって、私のお話を熱心に聞く姿を見て、この病院は地域包括ケア時代の公立病院のモデルとして、「化ける」かもしれないと感じました。そのためには、山積した課題に対してコツコツ赤字を削減する施策では、生き残りは無理なことを認識して、どんな病院になればいいか “厳しいからこそ、妄想する”ことを勧めました。住民の要望に応える社会的弱者ケアに終始せず、むしろ住民力や地域力を引き出し、元気高齢者の育成支援に関わり、住民文化を大きく醸成できる、地域づくりをマネジメントする拠点として、今後発展して欲しいと、エールを送って参りました。

 - その他