「暮らす」を実現する地域づくり~紀南地域ケースメソッド的検討研修会~
令和元年9月27日(金)19:00 ~21:00、熊野市保健福祉センターにおいて、紀南地域在宅医療・介護連携推進研修会が開催され、三重県医療介護連携アドバイザーとしてうかがいました。1年3か月ぶりの訪問でしたが、今回は当地域の医療・介護に関わる主要なメンバーを対象に、ケースメソッド的検討手法を用いて、紀南地域の在宅医療・介護連携の目指す方向性について再度目指す方向性を確認するなど、人材の育成養成のバックアップをして欲しいとの依頼です。地元自ら事例を作成し、それをもとに、「目的志向型の地域づくり」をテーマに30分のミニ講演と、1時間余りの目的に返ったグループディスカッションを実践しました。参加者は30名余り、紀南病院関係者、紀南医師会医師、歯科医師、薬剤師、訪問看護、歯科衛生士、あいくるチーム員メンバー、介護関係事業所、行政担当課長、紀南介護保険広域連合、市町地域包括支援センター等、まさにこの地域のリーダーが揃いました。
医師会長がリーダーシップを発揮して、行政と共に運営されてきた、生活を支える医療介護連携「あいくるチーム」から始まった、地域の将来を妄想する地域主体の活動です。紀南病院長はじめ当地域の中核病院が参画することで、目的達成に向けた具体的な活動展開がお行われています。過疎化や資源不足など課題は山積ですが、目的を見失わず、全国レベルのモデル的活動として、今後も推進していただけると確信しています。
今回のケースメソッド事例ですが、少し修正すればどこでも活用できる好事例だと思います。以下にご紹介しておきます。
<事例>
「住み慣れた地域で暮らすためにできることは何なのか」
当紀南地域は、熊野市、御浜町、紀宝町の3市町で構成されており、本年4月1日現在の人口は36,327人。高齢化率は約40%で、要介護認定者数は約3,500人という状況になっています。前年の人口を比べると、約700人減少し、高齢者の数も減少傾向となってきています。
地域の生活実態としては、公共交通機関が充分整備されているわけではなく、自家用車が主な移動手段ですが、運転が難しくなってきても代替手段がなく、移動に困る状況となっています。また、人口減少に伴い近隣の商店なども減少し、様々な場面で人材不足となっています。さらに、要介護者を支える事業所や診療所はある程度確保されているものの、ここでも高齢化や人材不足により、今後はサービスや必要とされる医療を提供することが困難になってくることも想定される状況になってきています。
医療と介護に関連する声としては、「病院のベッドに空きがないため、入院が難しい状況があったり、救急の受け入れが難しくなることが出てくる。」「在宅で生活を継続するためには、往診してくれる医師が不可欠だと思うが、地域によって可能な地域とそうでない地域があり、難しいんじゃないか。」「訪問介護を提供するヘルパーにも人員に限りがあり、希望する時間が集中すると提供することができないこともあり、今後はますます難しくなる傾向にある。」「施設をひとつの住まいと考えた時に、医療的な対応が難しく、医療依存度の高い方の受け入れは難しい。」「在宅医療や介護サービスの現状を考えると、在宅での看取りは難しいのではないか。」「自宅で看取りをすることが少なくなり、本人は自宅での生活を希望しても、家族としては最後は病院を希望することもあり、どうすればいいのか。」「もっと、市町が在宅医療や看取りについて積極的に関わるべきだ。」以上のような声が、どの会議においても聞かれます。このような地域の現状の中で、地域包括ケアシステムを構築するため、地域包括支援センターを中心に様々な事業が展開し、関係機関とも協議検討を行っていますが、課題だらけでどのように進めていくことがいいのか、どのような形がこの地域にあっているのか、役割分担も整理しながら検討していければと思います。