地域密着型病院とかかりつけネットワークの連携を目指して~第36回広島市安佐医学会

   

11月18日(日)、広島市安佐医師会館において、地元医師会(吉川正哉会長)主催の毎年恒例となっている歴史ある「安佐医学会」が開催され、13:00からの特別講演の講師としてお招きいただきました。この日は終日(10:00~17:00)、地域の医師・看護師・メディカルスタッフ等による研究・事例発表が行われます。このブログでも何度かご紹介しておりますが、広島市立安佐市民病院の平林直樹院長と懇意にさせていただいており、先生のマネジメントでこれまで、地域住民や市民病院のスタッフにお話をさせていただいております。今回も当会の中心メンバーである平林院長のお声かけで実現いたしました。安佐地域の医療関係の多職種が集まられるとのことでしたので、講演テーマは、『「地域包括ケア時代」 医療を生活資源に~地域密着型病院とかかりつけネットワーク~』といたしました。医師会の辻勝三副会長に座長をしていただき、約80分間お話しさせていただきました。その抄録は以下に記載しています。

会場には地域の医師会員をはじめ多機関・多職種の医療関係者が約200名参加されていました。終始うなずいたり熱い視線を送っていただいたり、共感の意志表示に触れながら、有意義な時間を共有することができました。中核病院である安佐市民病院と医師会および行政との連携は既に確立しており、全国のモデルとして今後発信されることは間違いないと思いますが、その後押しの役割が多少なりとも果たせたこと、講師冥利に尽きます。

【安佐医師会講演会 概要】

日本の社会保障制度は継続可能なのか、国が出したその答えが、地域包括ケアシステムであり、医療・介護費の抑制策ではなく、日本の将来をどう創っていくか、社会保障制度の在り方を模索する、我が国の存亡をかけた一大チャレンジだ。一方、病床再編で医療費抑制を全面に打ち出した医療ビジョンさえも、地域包括ケアシステムに統合されることで、行き詰まりから脱却した感がある。地域包括ケアシステム導入の経緯やその真意を知ることで、今後の動きを予測することが可能となったのだ。

今改定の基盤には、“生活に戻すため”というマインド(志)が明確にされている。病院経営の根幹となっている“入院基本料”は、サービス提供体制重視から、‟患者を生活に戻す“という結果にコミットしてこそ成果報酬として算定される。その人らしい生き方の実現において、疾病管理はあくまでその一手法といった捉え方が、連携(統合)を推進させる。病院は地域密着型病院として、‟入院前から退院支援”を意識して、常日頃から、地域で生活を支えている“かかりつけネットワーク”と連携がとれていてこそ、評価され経営が成り立つことになる。

急激な高齢化や人口減少化などに注目しながらも、目前の課題に翻弄されることなく、将来の明るい長寿社会をイメージして、「参加」と「活用」を重視した地域を創造していく意識と、実現に向けた協働が求められている。支える人と支えられる人を区分する時代は既に終わり、お互いが支え合うことで、時代を活き抜くことが可能となる。医療や介護は180度大転換、 “社会的弱者ケア重視から、むしろ社会的弱者を産み出さない、彼らが地域社会において活躍できる” ように、疾病管理から生活支援へ、大きく転換させていかなければならない。医療費・介護費は抑制するのではなく、地域を活性化させる‟投資 “として受け止めるべき時代が来たのだ。

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