地域包括ケア時代はマネジメントが本領発揮~名古屋がさらに暑い!!第21回日本医療マネジメント学会学術総会~

   

7月19日(金)〜20日(土)の両日、名古屋国際会議場にて第21回日本医療マネジメント学会学術総会が、「働き方改革」をメインテーマに開催されました。当学会は、私が愛媛の支部長をしていることもあり、評議委員会開催や総会での役割もいただくので、毎年参加しています。今回は初日の10:38~11:27に、一般演題(口演)「地域連携:入退院-2」のセッションの座長を仰せつかりました。発表時間はそれぞれ7分(発表5分、質疑2分)で、7人の方のご紹介と質問や意見の調整を行う役割ですが、しゃべりたがりの座長なもんで、時間内に収めるのは「至難の業?!」でしたが、何とか責任を果たせました?! 振り返れば、地域連携や退院支援部門にとって、在院日数を短くすることが最大の使命でしたが、昨今は生活に戻すための医療が本格的に推し進められるようになり、病院・医療の在り方をけん引するマネジメント的役割に変化しつつあります。「医療を生活資源に! 入院前から退院支援!!」をキーワードに、当部門を長くやってきた私にとっては、やっと認められる時代になってきたと、報われつつある時代の流れを実感しています。今回の発表のいづれの内容も、患者のその人らしい生き方を実現するためのチーム連携が前面に出ており、診療報酬改定を踏まえた医療経営上の工夫に留まることなく、患者を生活に戻すための、地域包括ケア時代に求められる「王道の医療」へと、確かな変化を感じることができました。座長としてこれら演題を通じて、以下のような点が思い浮かびました。いくつかは実際にコメントとして発言しました。
1)医療の目的 が「生活に戻すため」と明確化されたことで、看護師のアイデンティティーを発揮する好機がおとづれている。退院支援部門が担うのではなく、担当者が個人的に関わるものでもなく、病院全体が地域と連携して、患者のその人らしい生活を実現ために、協働していくことが求められている。
2)「思いに寄り添う」は素晴らしい表現だと思う。よく使われている「患者のために」との違いを意識したい。患者のためにと言いながら、医療者の都合を押し付けている現状を見るたびに、まずは「寄り添うこと」だろうと言いたい。
3)チェックリストのメリット・デメリットに留意したい。特に課題を見つけるためのツールになると、患者の退院後のイメージが不明確で共有できないまま、課題解決型の対応に終始する恐れがある。担当もチェックリストに縛られて、やらされ感覚満載で、患者のエンパワーには、到底及ばない。生活に戻すという目標設定が、すべての原動力になることを再認識して、常チェックリストのバージョンアップを図り、活用する必要がある。
4)生活に戻すが重視される中で、就労支援はその最たる取り組みだと思う。MSWが行政はもとより、産業医や企業との連携を積極的にアプローチするのは、今後のMSW活動のモデル(スタンダード)といっても過言ではない。
5)入院前から退院支援の究極は、安易に入院させないこと。つまり入院をあえて断ることが大切との、東北大学病院から報告されました。外来と連携して、「入院を回避する取り組み」を強化しているとのこと。生活に戻せない入院を無くしていく、退院支援の究極の目標へのチャレンジにエールを送りたい。
6)専任看護師の役割 とはなんでしょう。全看護師そして病院全体が、患者を生活に戻す、そして社会的弱者を生み出さない医療へと変わるために、病院文化を醸成するリーダーとして期待したい。専任への依存は逆効果です。患者のマネジメントから病院全体のマネジメントへ、専任看護師が、病院をエンパワーできるよう、トップの理解が望まれます。
7)「働き方改革」が本学会総会のテーマでありますが、そもメインシンポとこの口演発表が同時並行とは残念です。プログラム上仕方がないのかもしれないが、働き方改革が真意が、長時間労働対策ではなく、医療の質の向上 のためということであれば、医師中心のヒエラルキーの改革と共に、生活に戻すことを重視した地域連携部門の、病院や地域へのマネジメント力の強化が不可欠であり、重ねて欲しくなかった。・・・等々。

前の席は少し空き席があったものの、後ろは立ち見となっているほど、多くの参加をいただきました。少数派だけど正統派といってきましたが、近い将来、多数はと成長すると妄想しています。

この学会は、同じ方向を目指して、共に取組んできた「同志」に会える楽しく有意義な機会でもあります。熱い名古屋ですが、微力ながら時代の流れを牽引してきたこれまでとこれからを確認でき、爽やかな気持ちで、また明日に向かう一歩を踏み出すことができました。

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