データを活かして地域包括ケアを推進するために〜日本医師会第4回地域包括ケア推進委員会〜

   


7月31日14時〜、東京駒込の日本医師会館において、第4回目の地域包括ケア推進委員会(中尾委員長・江澤常任理事)が開催され、アドバイザー(オブザーバー)として参加しました。今回は産業医科大学教授の松田晋哉先生がゲストで、「データから考える地域包括ケア」をテーマで講演をいただきました。自ら「数字オタク」とご紹介され、ナショナルデータは医療と介護を含めた分析が可能となり、医療・介護ニーズの両面に合わせて生活支援を含めた包括的な対応を評価する時代となったことを前提に、データの活用による地域の将来をイメージした、医療分野からの地域づくりへの参画の重要性について、約80分間ご講演をいただきました。地域医療構想におけるポイントは「自院の将来像を描く」ことであり、自治医科大学の永井教授の「データに基づく制御」を引用して、わかりやすいデータを示しながら、お話しいただきました。(以下に概要を私見を交えて記載)

<私自身のデータに関する意見>
 データから課題は見つけれても 目指すべき未来やそれを実現するストーリーがイメージできない。そのため、課題解決に目が向き、目的実現のための協働にはならず、それぞれの、課題解決のための役割を果たすために、日々一丁上がり的な対応に終始しかねない。データが、それぞれの都合のために使用されて、それぞれの生き残りのための方向を促進しかねない状況が懸念される。
 地域自信が考え取り組んでいかないといけないのに、データーから 地域の将来をイメージして、それを共有・協働するマネジメントを果たす人材不足が明らか。 保健師等 公衆衛生専門家の役割として期待したい。
 目指すべき地域イメージづくりへのストリー作成にいかにコミットできるかがポイントではないか?でなければ、課題解決という、やらされ感覚の強い、日々の業務に翻弄され、結局は、今の延長線沿いにしか、活動は発展しないのではないか?
 地域の将来を、将来や現実を踏まえた上で、ポジティブに妄想出来るような、人材育成や仕掛けが必要だと痛感している。
 データによる数値的な平均値ではなく、現状把握、地域や人々のパターン化と言った、地域や人々が具体的に見える化の出来る 活用が図れないか、検討している。数値による統計処理は、現状とは一脱した、想像を生み出しかねないことを懸念している。
 地域づくり活動を実践している人たちの多くは、データではなく、志から動いている。マインドをエンパワーすることが、セルフケア推進でも同様であり、いかに進めていくかがキーとなる。データの活用ができる、マインド教育の重要性を実感しているところである。

<松田教授のご講演内容の概要メモ>
 人口の動向は、よほどのことがない限り確実な未来であり、地域格差がますます激しくなる。人口分布だけでなく、疾病構造も大きく変化し、地域格差も激しい。
 肺炎 脳血管障害 骨折・・・ ベースに慢性疾患があって急性期のエピソードが起きる。
 先端医療の受け皿ではない、地域密着型病院の役割が重要。大学など先端医療分野が手を出してくると、地域包括ケアシステムを崩壊させかねない。
 地方では 住宅政策が伴わないと進まない。住まい方が大切な要素となる
 戦略的に考える必要があり、進め方のストーリーががイメージできないといけない。
 現実を把握して、それぞれの地域で考え、自身の取り組みが動かないと難しい。
 人口が減れば 一般病床はいらなくなる。既に余っている。大学病院が頑張り過ぎると 他の病院の病床がさらに空いてしまう。
 医療区分 1 の患者が増える。全部在宅で見るのは無理であり、どこで対応するかを考えれば、集まっていただいてケアを考えるべき
 日常生活圏域でケアすることが基本であり、職場と住んでいるところが離れている大都会の問題は深刻。
 多様な疾患を持った方が介護保険を使っており、ケアマネジメントが難しい。にもかかわらず、かかりつけ医の指導は行き届いていない。そのため施設と地域のケアマネジメントが繋がっていない(例:口腔ケアの問題)。介護保険の現場から急性期疾患が出現しており、かかりつけネットワークに支えられていれば 起こさないのではと考えられる。
 介護施設での保健医療対応が不十分のため、見逃され放置されているケースが少なくない。その方々が 急性期に流れている現状がある。
 ポストアキュートへの対応がどんどん増えているが 医療の体制は逆行、無関心である。
 オスカー(無料の電子カルテ)を使って 地域全体で患者情報共有する必要。かかりつけネットワークに地域密着型病院をつなげるマネジメントできるセンターが必要であり、医師会ネットワークに期待。
 グルメ時代は、セルフケアを逆行させていると懸念。養生=セルフケアと言える中で、本来防げるはずのものが効いていない、活用されていない。セルフケアを推進するエンパワーが重要。「総合健康指標ダッシュボード」の活用の提案。
 営利目的の医療介護周辺サービスへの参画に注意が必要。 非営利の医療がしっかりと関わることが不可欠
 住民の意欲向上をはかる社会的処方として、リンクワーカーの役割に期待。患者にとって重要なことを焦点に、保健師につなげるなど、日常のさりさやかな困りごとへ、自立支援をしていく。
 かかつけ医の役割はますます重要に。主治医意見書の活用は最も身近で重要な参画。
 病院が地域資源になる。地域に溶け込んでいく病院モデル(例:志村大宮病院 霞ヶ関南病院など)病院が地域づくりに参画する「日本型CCRC」の普及に期待。
・・・等々 自分自身の考えと一致する、重要な視点についてお話しいただいた。

 - その他