思いは一つ!ネットワーク作りを楽しめ!!~第46回正光会医療研究会~
11月30日(金)10:00~15:30、宇和島市津島やすらぎの里:大ホールにおいて、正光会精神衛生研究所(山内洋三所長)主催で、第46回正光会医療研究会が開催されました。精神病院が自ら主宰し継続しているユニークな研究会で、山内所長の心意気・情熱の伝わる会です。今回は、「多機関連携でつなぐ自殺未遂者相談支援事業~自殺の再企画ゼロを目指して~」をテーマに、自殺予防対策に焦点を充て、高知県の先進的な取組みの講演をもとにディスカッションが行われました。高知県から4名のゲストをお招きして、まず、私の公衆衛生の同志であり30年来の友人である、現在高知県安芸保健所長の福永一郎先生から「多機関連携の心得について」、連携は目的ではなく、住民や地域の力を引き出して、セルフケアや互いの支え合いを促進し、目指すべき地域を創るために行うこと、目的をぶらさず“王道を進め”といった、まさに私のMCCEプロセスと共通した考え方のお話がありました。続いて、高知県立精神保健福祉センター長の山崎正雄先生から、「ネットワーク作りについて」とし、自殺予防において、医療ケアによるうつ病対策の限界を認識し、地域で支え合うネットワークが不可欠であることを強調されました。まずはどの機関もたらいまわしは避け、苦しみを受け止めることが大切で、ニーズに合った情報を選択し共有してつなげることが重要であるとの指摘もありました。高知県安芸保健所の公文一也主幹から、「地域の仲間でつなぐ安芸福祉保健所自殺未遂者相談支援事業」とし、公文氏が同県幡多地域で培ってきた活動を安芸地域で展開されたネットワークについて紹介され、「ネットワークを活用すれば何とかなる」ことを実感・実践されている、「思いは一つ」の熱いお話がありました。公務員らしくないまさに真の公務員マインドを見せていただき、大変心強く感じました。安芸市消防本部第一消防隊救急副部長の谷嘉彦氏から、「自殺未遂者支援の第一走者で活動して感じること」として、医療機関のたらい回しの現状に疲弊しながら、救急案件の対応に追われるのではなく、むしろその件数を減らすことが大事であることに気づき、同じ思い(目指すべきイメージ)を持った仲間との協働にその可能性を見出して取組んできたお話がありました。一つのきっかけが、いろいろな場面での連携につながることも実感されたとのこと。最後に、高知県立あき総合病院の南智恵(PSW)主査から、「地域と医療をつなぐ」として、当初総合病院として、精神科はあるものの院内連携が難しく、このネットワークに入ることを避けていた時期もあったが、現在は「こころとからだの両方が診れる病院」としてアピールできるようなった経緯・現状についてお話がありました。また病院の地域へのアウトリーチがますます重要になっているとのこと。5名ゲストが同じ方向を目指して、日常的にチームを組んで、楽しみながら、地域づくりに協働されている姿が、伝わって参りました。
その後、今治・宇和島・愛南 それぞれ3圏域から、各病院の自殺者の統計分析を紹介すると共に、地域へのアウトリーチやネットワークの充実に向けた取組の重要性について報告がありました。データ分析もしっかりとした内容で、是非学会誌などにエントリーして欲しいと思いました。その後「地域でできる自殺予防について」をテーマに、高知からのゲストがファシリテーターとして参加者全員によるグループワークにつながれ、その後報告がされました。個人情報保護法をどうクリアするか? 住民のセルフケア、住民力を引き出すためのネットワークの大切さ。ハイリスクアプローチからコミュニティーアプローチへ、課題対策から将来あるべきイメージへ実現に向けてなど・・・公文氏が、これらの報告を踏まえて、ネットワークがさらなるネットワークへ広げていく力を養いながら、地域全体に広げていく大切さ・楽しさを強調され、まとめられました。
私の方から、「高知の活動は、自殺再企画予防のため単独ではなく、まさに社会的弱者を産み出さない、地域包括ケア時代の地域づくりそのものであること」「何をするかといった手段ではなく、要はマインド(志)であること」などを、改めて確認しました。「課題解決に翻弄されている現状を振り返り、手段が悪いのではなく、マインドが曖昧になることが問題であり、いかにその継続や普及を図るかが重要である」ことを、まとめとして最後にコメントさせていただきました。