地域包括ケア時代を結核がけん引する~令和元年度指導者養成研修修了者による全国会議~

   

11⽉30(⼟)9:00~、結核研究所 4階講堂において、結核予防会結核研究所主催の、恒例の「指導者養成研修修了者による全国会議」が開催されました。加藤誠也氏(結核研究所長)の挨拶を皮切りに、15時過ぎまで、最新の結核に関する情報提供や熱心なディスカッションが行われました。「結核指導者養成研修」は平成4年からスタートしており、毎年全国から数名が招聘され、日本の結核等感染症対策のリーダーである素晴らしい講師陣から、マンツーマンに近い講義やディスカッションにより、地域の指導者として養成されています。今年で27年目となったこの研修で、全国に約130名の指導者が生まれました。私もその一人で、忘れっぽい私でも、中身の濃い研修の記憶が残っています。約10年前から、指導者のフォローアップや情報共有の場として、本研修会が開催されていますが、普段結核業務と直接関係のない私にとっても、興味深く、また参加できることを誇りに思える機会となっています。特に今回は、「地域包括ケアと結核対策」を考えながら、ディスカッションに加わることは、大変有意義で刺激でした。

プログラムは、 ① 厚⽣労働省の結核対策の⽅向性:上⼾ 賢氏(厚⽣労働省健康局結核感染症課)② 全ゲノム解析のお話:御手洗 聡氏(結核研究所)③ 新しいLTBI治療:加藤誠也氏(結核研究所)に加えて、指導者研修修了者2名からの研究報告がありました。にわかに、結核対策の専門家になれる、中身の詰まった講義でした。

午後からは、「パネルディスカッション:外国出⽣者の結核対策で難渋した事例」ということで、指導者研修の一期生であり私の友人である犬塚君雄氏(豊橋市保健所長)の座長のもと、「日本語学校で起きた結核集団発生」「対応に苦慮した多剤耐性結核患者の⼀例」「対応に苦慮した結核患者への対応」の3つの保健所からの報告をもとに、ディスカッションいたしました。結核対策においてお馴染みの、下内昭氏(結核研究所主幹)や前田秀雄氏(東京都北区保健所長)らと共に、地域包括ケア時代の結核への取り組みや保健所・行政の役割について、有意義なディスカッションができました。日本人よりもはるかに罹患率の高い外国人がもたらす結核問題により、結核対策は新たな局面を迎え、専門家や行政による、「結核封じ込め作戦」の限界が明らかになってきています。地域包括ケアの根幹である、高齢化による要介護者の急増による、専門家によるケアのマンパワー不足とは異なりますが、共生社会の構築による、セルフケアや支え合う地域づくりが重要であることは、共通していると実感しました。結核対策が、むしろ地域包括ケア時代をけん引してくれるのではないかとの期待も膨らみました。今から、来年の当会議参加が楽しみです。

 

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