地域連携における大学病院の役割~日本医療マネジメント学会 第20回長崎支部学術集会~

   

2月15日(土)12:45~18:00、長崎大学医学部記念講堂および良順会館2F ボードインホールにおいて、日本医療マネジメント学会 第20回長崎支部学術集会(川崎浩二総会長)が開催され、16時からのシンポジュウムのシンポジストとしてお招きいただきました。今回の学術集会の会長が約20年来の友人であり同士である長崎大学病院地域医療連携センター長の川崎浩二先生からの声掛けでしたので、同じく仲間の浜松医科大学医学部附属病院の小林利彦先生と共に駆け付けた次第です。全体テーマが「病院と地域のネットワーク~その人らしい生活を実現するために~」でしたので、それを踏まえて、3人のシンポジストで、最初に沖縄県立中部病院の高山義浩先生から「病院に求められる地域包括ケアとの連携」について、2番目は私で「生活に戻すための医療 ~入院前から退院支援~」について、そして最後は、「地域を支える医療・介護・福祉関係者に期待される資質と行動」について、三者三葉それぞれ30分程度お話して、フロアとディスカッションいたしました。
当初、パワポを使ってお話しするつもりでしたが、結局舞台を明るくしていただき、出たとこ勝負の勢いで、会場からのエールというか声援をいただきながら、楽しく口演させていただきました。フロアからの質問も活発で、かかりつけ医として住民の生活を支え、在宅医療にも取組んでおられる先生方からも、急性期病院の特に医師の意識改革やアウトリーチへの積極的な参画など、連携強化への強い意見が出されました。また、川崎先生と同様、同志として長い付き合いとなる松本武浩先生(長崎大学病院医療情報部:准教授)とのやり取りも、熱く楽しくさせていただきました。
長崎大学病院の川崎先生たちの活動の素晴らしいことは、会終了後の懇親会の盛り上がりです。今回も当病院の看護部長/副病院長である貞方三枝子氏をはじめ病院関係者や、地域で活動を共にしている医師や歯科医師他多職種の方々、県外からの参加もあり、集会の盛り上がりを凌ぐと言って良いほど熱く語り合いました。
昼間は春の天気で、集会を抜けて、浦上天主堂や平和公園に出かけ、原爆を乗り越えてきた長崎の逞しさを肌で感じてきました。夜は雨模様で、「長崎は今日も雨だった♪」を口ずさみながら、傘もささず小雨の中を、友と一緒に歩きました。長崎の仲間や街からいつも元気がいただけます。ありがとう長崎!!

私の抄録「生活に戻すための医療~入院前から退院支援~」を参考までにつけております。
 「生活に戻すための医療」を実現するためには、病院全体がその目標に総力戦で取組んでこそ可能である。そのため2013年、医療福祉支援センターをあえて廃止して、愛媛大学病院総合診療サポートセンター(TMSC)を、新たな機関として立ち上げた。全国から多くの視察をいただいたが、地域連携部門の進化系、いわゆる“入退院センター”ではないことを解くには労力を要した。
TMSCの役割は、「生活を分断しかねない」従来の医療の在り方を見直して、「生活に戻すこと」を一番の狙いに、チーム医療や地域との連携を推進することである。特に、地域や暮らしを意識していない急性期病院だからこそ、思い切った改革が必要だった。、TMSCに配置された60名近いスタッフは、「入院前から退院支援」を掲げて、病院や地域をマネジメントするために、院内はもちろん地域へのアウトリーチに取組んでいる。最も重視していることは、患者や家族が何のために入院し退院するのかという、目的の明確化および合意形成である。疾病管理重視の医療者や、病院の対応に全てを委ねてくる患者や家族に、「自分らしく生きる」「暮らしに戻るために医療を活用する」といった意識変革はそう簡単ではない。地域包括ケア時代の後押しもあって、少しずつ定着してきた感はあるが、まだまだこれから、特に急性期病院は大転換を余儀なくされている。
大学病院といえども、高齢者が6・7割占める状況下で、サービス提供ではなく、結果が求められる時代に、結果を出すということがどういうことなのか? その点を重視した病院のガバナンスが不可欠である。病院から地域へ送るのではなく、地域から預かってお返しする、「日常の暮らし」が理念となる。「入院前から退院支援」には、地域の「かかりつけネットワーク」との日常的な「つながり」が必要である。病院自身が地域にアウトリーチをかけ、その構築に参画することは、地域との信頼関係や連携につながると共に、病院自身の経営にも極めて重要だ。地域が病院を育て、病院が地域の暮らしを支えるネットワークを育てるといった、互いの関係性の充実を図っていかなければならない。当シンポジュームでは、特に「尊厳の保障と自立支援」の観点からも述べたい。

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