地域包括ケア時代の公衆衛生学会総会への期待を込めて~第77回日本公衆衛生学会in福島~
2018/10/29
10月24~26日、第77回日本公衆衛生学会総会が、福島県郡山市のビックパレットふくしまをメイン会場に開催されました(この会場は、実は3日ぶりです)。総会学会長の安村誠司氏(福島県立医科大学医学部公衆衛生学教授)は「ゆりかごから見取りまでの公衆衛生~災害対応から考える健康支援~」をメインテーマに挙げ、地域包括ケア時代の公衆衛生の在り方や今なお続く災害被災地からの発信ということで企画されました。全国各地から、研究者以外に公衆衛生従事者や行政関係者、また医療福祉関係者など、多様な機関・職能が約3000人集まる、絶滅危惧種と言われる「公衆衛生」の日本最大のイベントであります。行政を離れて20年近くなり、積極的な企画への参画や、一般演題を応募する機会はめっきり減りましたが、シンポジウムや講演等に声をかけてもらって、何とかほぼ毎年この総会には参加し続けています。もちろん、ご専門はと尋ねられたら「公衆衛生です」と今も即返答しますが、予防や疫学に偏住している当学会への参加意欲は正直覚めていました。しかし最近になって、地域包括ケアが重視されることで、公衆衛生に再び光が当たる雰囲気が見えてきたように思います。当学会が力を盛り返して、地域包括ケア時代の医療や福祉を牽引してくれるのではないかと妄想しています。今回私が参加したのは、以下の2つのシンポジウムです。このシンポジウムが、公衆衛生の新たな展開のきっかけとなることを期待して、熱弁して参りました。
〇シンポジウム17「シンポジウムタイトル:元気高齢者の住民力を活かした“公衆衛生分野職員によるまちづくり”」開催日時:2018年10月25日(木)9:45-11:35(110分) 座長:大平利久氏(元気づくり大学長)・櫃本真聿、シンポジスト①小笠原正志氏(下関市立大学経済学部准教授)、シンポジスト②菅野恭子氏(福島県伊達市 健康福祉部健幸都市づくり課元気づくり係長)、シンポジスト③川上和幸氏(栃木県市貝町健康福祉課健康づくり係長)、シンポジスト④大澤裕美氏(元気づくり大学副学長)・・・マネジメント力に欠ける行政が、住民はもとより地域資源を活かしきれない現状を打破するために、人材育成に取組む元気づくり大学の実践と成果、そして今後の展望について考える・・・が狙いです。500人入る会場でしたが、それでも300名はゆうに超えていたと思います。「ささやかな介入」「日常の住民のニーズから地域づくりへ」「健康包括の推進」など、キーワードが参加者の腑に落ちたと思います。元気づくり大学及び全国6か所の各キャンパスの活躍と益々の発展、心から期待しています。北広島のキャンパスを運営する「どんぐり財団」の関口氏(元行政公務員で、本システムに関わりたいがため、退職して現在に至っている)が、「本システムに出会って、人生変わりました」とのフロアから発言は、凄いインパクトでした。
〇シンポジウム28:薬剤師の地域包括ケアにおける役割と多職種連携 開催日時:2018年10月25日(木)16:35-18:05(90) 座長:川崎直人氏(近畿大学薬学部公衆衛生学)・多根井重晴氏(青森大学薬学部)、シンポジスト①志岐由利子氏(福島県女性薬剤師会会長 めぐみ薬局)、シンポジスト②高畑進一氏(大阪府立大学大学院総合リハビリテーション学研究科)、シンポジスト③島田淳子氏(株式会社En Santê 栄養士)、シンポジスト④櫃本真聿(テーマ:地域包括ケア時代と公衆衛生~薬剤師のエンパワメントについて考える~)・・・「患者のための薬局ビジョン(平成27年度厚労省)」をきっかけに、地域包括ケア時代の牽引役として、地域の健康拠点としての薬局やかかりつけ薬剤師の活躍が期待されおり、公衆衛生を理解した薬剤師を育成支援し、地域を生活重視からサポート体制づくりを推進していく・・・を狙いとしています。薬剤師の側からでなく、他職種からの連携を期待し協働を実現しようとする企画、参加者は少なかったものの、学会で発進したことは 大きなインパクトがあったのではないでしょうか!
公衆衛生学会は、同志たちの出会いの場です。学会場だけでなく、むしろ通路での立ち話が熱く盛り上がります。また福島の夜も妄想が膨らむディスカッションで・・・楽しく有意義な時間を過ごすことができました。来年は高知県開催です。久々の四国開催を楽しみにしています!!