公衆衛生学会の今後の方向性を探る〜日本公衆衛生学会 in 高知〜

   

10月23日~25日、高知市文化プラザかるぽーと・ホテル日航高知旭ロイヤル・高知会館・高知新聞放送会館などの会場で、第78回公衆衛生学会総会(学会長:安田誠史 高知大学教育研究部医療学系教授)が、「実践と研究との協働の深化~マインドとコンピテンシー~」をテーマに開催され、全国から3000人余りが参加しました。

中国四国地域で唯一の本学会総会未開催の県である高知県での開催となりましたが、関係者の素晴らしいチームワークで、安田学会長のマインド(以下に記載)は十分に伝わったと思います。「公衆衛生」の学会ですので、実践や成果が特に求められると思います。その分、目の前の課題にも振り回されやすい傾向は否めません。しかし私も、学会と現場との協働には正直、逆に疎遠になりつつあるように思います。地域包括ケアや働き方改革といった大きな流れによって、従来の我が国の取り組みの180度の大転換が必要です。その原動力として牽引すべき「公衆衛生」の専門家たちが、疾病管理を重視した予防活動に編重していては、地域包括ケアの構築は進みがたいと確信しています。公衆衛生関係者が、住民の暮らしに視点を置いた「セルフケア」の推進と、これからの地域の目指す方向を明確にし協働を推進する上で、地域づくりのための、職能や分野を超えたチームワークづくり(マネジメント)をさらに強固にしていかなければなりません。今回の学会発信が、その原動力にもなりうる学会の大変革につながることを心から期待しています。

学会は、私にとって、全国で活躍中の「同志」達に出会える楽しく有意義な場でもあります。今回も多くの出会いがあり、私自身エンパワーされました。

<安田学会長コメント>

本学会総会のテーマは、これまでもしばしば取り上げられてきた「連携」というキーワードと重なり、インパクトに乏しいかもしれません。このテーマとさせていただいたのは、会員の皆様と、サブテーマ「マインドとコンピテンシー」の観点から、「実践と研究との協働」について議論したいと考えているからです。人びとが健康、安全、安心に暮らすための基盤である公衆衛生を、実践活動の効果を評価しながら向上させるために、また、公衆衛生の領域で起こる多様な新課題を迅速に把握し、対応策を時宜を失することなく社会実装するために、実践と研究との協働cooperationは欠かせません。しかし、公衆衛生の領域の実践と研究との間にはまだ距離があり、多くの場合、それぞれでの成果が別々に発信されるだけに留まっています。実践と研究との協働による正の相互作用によって、それぞれが単独で取り組むよりも、社会への貢献も学術活動としての意義も拡充されるはずです。実践家と研究家とが協働の深化をめざし、それぞれの立ち位置で大切にすべきマインド(問題認識と価値観に影響する志向)、そして磨きをかけるべきコンピテンシー(知識、技能、態度を統合して活用する能力)を明確にしたいと考えております。実践と研究との協働によって得られる成果ほど、保健医療福祉専門職の教育と育成の場において、公衆衛生活動の社会における意義および学術研究としての魅力を伝えられるものはないはずです。実践と研究との協働を深化させるためのマインドとコンピテンシーを明確にすることは、公衆衛生の領域での若手人材を確保する上でも有意義であると考えております。

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