地域包括ケア時代のゴールを共有する~医療マネジメント学会愛媛支部総会~

   

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11月23日(水)第7回医療マネジメント学会愛媛支部学術集会が 大洲中央病院の大久保啓二院長を会長に テーマは「故郷を支える医療~地域医療を守るために今、何をすべきか~」として 初めて南予地域で開催されました。200名を超える全県下からの参加者で 病院内に設置された会場は立見席が出るほどでした。6年を経過し当会は発展し続けておりますが 古林事務局長(新居浜十全病院名誉院長)を核とした 幹事他関係者・会員の皆様に チームワークのお陰と心から感謝申し上げる次第です。

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今回の特別講演には日本医療マネジメント学会理事長の宮崎久義先生をお招きし 愛媛の取り組みを直接見ていただけることになりました。宮崎先生の未だ全く衰えないパワフルな講演 そして講演前後の歓談で 我々の目指していることと先生がけん引されている方向とが一致していることが確認できて エンパワメントされました。先生は周囲を元気にするプロフェッショナルであることを改めて感じました。

また市立宇和島病院の梶原伸介院長から「IT地域連携システム(きさいやネット)の現状と今後」をテーマに “患者住民のため”に熱意溢れる基調講演もいただきました。一般演題は42題 毎年演題数や参加者数が増加しています。医療そのもの発展と合わせて むしろ限られた医療資源をいかにマネジメントするかが問われています。地域医療が進んでいるまちとは 医療資源が豊富であることではなく 地域住民がその資源を把握し活用している地域のことを指すのだと考えています。それに向けた住民を含めたマネジメント力が 地域の医療を左右する時代となりました。南予地域は特に医療資源が限られ今後増えることが期待し難い地域であります。今回の南予初開催が 真の地域医療の推進につがるための力となればと祈念しております。

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それにしても 大洲中央病院の院長や事務長のリーダーシップ そしてスタッフのチームワーク 感銘いたしました。これを見せていただくのも 何よりの楽しみであり心強い限りです。ありがとうございました。

img_76691来年は松山リハビリテーション病院(木戸保秀院長) そして再来年は新居浜十全総合病院(中村寿院長)での開催予定です。地域包括ケア時代の医療介護等のマネジメントの一役を今後も果たしていけるよう 役員・会員一同努めて参りたいと思います。

 

なお 学会総会において 以下のような挨拶を 支部長としてさせていただきました。

<参考:挨拶>

この地域包括ケア時代においては、“医療崩壊”といわれる行き詰った社会保障制度下で、医療者不足の解消では到底解決のつかない現実を見極め、地域包括ケアシステムが打ち出された重要性を、すべての医療者が十分認識しなければなりません。しかし地域医療ビジョン構想などが打ち出され、地域をあげた思い切った医療ダウンサイジング・機能分担が余儀なくされる中、目前の対応手段に振り回されて目的があいまいとなり、本来「患者のためにあるべき医療」が、「医療のために患者がいる」かのような誤解や混乱が生じています。

地域包括ケア時代が目指す方向は、社会的弱者を一方的にケアするといった、従来の行政や医療・福祉体制を見直し、医療や介護を受けながらでも、地域で自分らしい生活を送りさらに地域に貢献したいという“元気高齢者(障害者)”を、わが国を支える重要な社会資源として育成支援していく方向へ切り替えていくことだと思います。その実現に向けて、医療・介護においては、疾患や障害によって人生や生活が途切れないよう、医療・介護の目的を生活継続の観点に転換することが肝要であり、疾病管理と合わせて生活者それぞれが望む生活に戻すといった機能・役割が求められています。医療・介護が“生活資源”であることを再確認して、“してあげる”から“求められる”へ、生活を見据えたその人らしい“生活に戻す” もしくは望ましい“死に方の支援”といった“生活の質(QOL)・死の質(QOD)”を重視した、チーム医療・介護への展開を図っていかなければなりません。

医療機関や介護施設等はさらなる地域密着型を目指し、入院(入所)前から生活に戻すことを踏まえた体制整備が必要です。診断や治療経過に大きくぶれさされることなく、「つなぐ」連携よりも、入院前の生活を「分断させない」継続が何よりも重要であり、そのためにも、①患者・家族の意向(入院の目的)の明確化と共有化、②それに向けた早期からの退院計画、③実現するための支援チーム体制作り、④患者・家族を地域で支える「かかりつけネットワーク」の構築などが求められます。

生活に戻すための医療マネジメントを可能とするには、患者・家族の生活ニーズを掘り起こし共有するための「多職種が集まる場」を確保するとともに、患者・家族はもちろん、多機関・多職種へのエンパワメントを図る「ささやかな介入」が欠かせません。そのリーダーは医師とは限りませんし、むしろ看護師の役割が大きいと思っています。医師は診断・治療を軸足におき、看護師は生活に軸足をおき、互いが両輪となった一体的な基盤のもとに、多職種連携が推進されてこそ本来の医療が提供できるのではないでしょうか。

地域包括ケア時代は、国民皆保険制度をも大きく揺るがす、これまでの医療の歴史的大転換であると認識しています。診療報酬をはじめ国の制度改革ではこの時代を乗り切ることは不可能です。日本医療マネジメント学会及び愛媛支部の皆様の地域に根付いた活動により、限られた地域資源を総動員し、患者力・住民力そして地域力を引き出して、元気高齢者(障害者)がその人らしい生き方死に方を実現できる地域づくりを目指して、意識啓発やシステム作りに貢献されることを心から期待しています。

 

 

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