医師が患者になって分かったこと

   

~ウロリフト術後2週間。「手術が終わってから」を患者として経験して~

ウロリフト手術を受けてから、約2週間が経ちました。

おかげさまで、ようやく「少しずつ元の生活に戻ってきたな」と感じられるようになりました。

振り返ってみると、手術そのものは本当に順調でした。

腰椎麻酔で手術を受け、手術時間も約30分。大きな痛みもなく、「思ったより楽だった」というのが正直な感想です。

しかし、今回一番大変だったのは、実は手術が終わってからの2週間でした。

手術よりつらかった? 術後の一夜

手術後は、出血や排尿状態を管理するために尿道カテーテル、いわゆるバルーンが留置されました。

翌朝までベッド上で過ごすことになりましたが、このカテーテルの刺激によるものと思われる強い尿意や膀胱のけいれんのような症状が続き、ほとんど眠ることができませんでした。

翌朝、カテーテルを抜いてもらった時には、

「これで楽になる!」

と思いました。

ところが、そう簡単ではありませんでした。

カテーテルが抜けても続いた頻尿と排尿痛

その後もしばらく、

  • 急に襲ってくる強い尿意
  • 頻尿
  • 排尿時の痛み
  • 残尿感
  • 尿意は強いのに、実際には少量しか出ない

といった症状が続きました。

特につらかったのが、突然やってくる「待ったなし」の尿意です。

仕事にも比較的早く復帰しましたが、トイレがすぐ近くにない場所では、本当に脂汗が出るような思いをしました。

「こんなにしたいのだから、かなり出るだろう」

と思ってトイレへ駆け込んでも、実際にはそれほど出ない。

しばらくは念のため尿パッドをつけて仕事に出ることもありました。

医師として頻尿や尿意切迫という言葉はもちろん知っています。

しかし、それが生活の中でどれほど大きな負担になるのか。

これは実際に経験してみなければ分からないことでした。

夜中に4回、5回と目が覚める

夜も大変でした。

眠っても尿意で目が覚め、トイレへ行く。

また眠る。

そして、また尿意で目が覚める。

多い時には一晩に4回、5回とトイレへ行くこともありました。

当然、熟睡できません。

昼間は仕事がありますから、体力的にも少しずつ疲れてきます。

「本当に良くなるのだろうか」

そんな気持ちが頭をよぎることもありました。

それでも、

「良くなるために受けた手術なのだから、きっと良くなる」

と、自分自身に何度も言い聞かせました。

便通にも影響がありました

もう一つ意外だったのが、便通です。

私は普段、便通にはほとんど困らない方なのですが、術後は前立腺周辺や直腸周辺にも何となく違和感があり、すっきり排便できない状態になりました。

強い便秘ではありませんでしたが、便を柔らかくするタイプの薬も利用しながら、できるだけ力まず排便できるよう調整しました。

排尿だけでなく、骨盤の中全体が「まだ手術から回復している途中なんだ」と感じる2週間でした。

アルコールもスポーツもお休み

この2週間はアルコールも控えました。

スポーツもせず、運動は散歩程度。

できるだけ身体に負担をかけず、回復を優先する生活を続けました。

「これだけ気をつけているのだから、早く良くなるだろう」

と思うのですが、身体というものは、こちらの都合どおりには回復してくれません。

結局、必要なのは時間でした。

本当に「2週間」でした

そして術後約2週間。

この2日ほどで、明らかに変わってきました。

夜中のトイレは4~5回から、1回程度に。

排尿時の痛みも、ほとんど気にならなくなりました。

まだ少し尿が出にくい感じや違和感は残っていますが、強い残尿感もずいぶん減ってきました。

朝の散歩も、久しぶりに爽やかに感じられるようになりました。

「2週間くらいすると落ち着いてきますよ」

そう説明されていましたが、

本当に2週間でした。

もちろん、まだ完全に本調子ではありません。

ウロリフトによってどこまでQOLが改善するのかは、これからもう少し時間をかけて見ていきたいと思っています。

それでも今は、

「ようやく回復の方向へ向かっている」

という実感があります。

「手術は成功しました」の、その後

今回、患者になって非常に強く感じたことがあります。

医療ドラマでは、

「手術は無事成功しました」

という言葉で一つの物語が終わります。

そして次の場面では、

「数か月後――」

患者さんが元気に生活している。

しかし現実の患者さんには、その間があります。

手術翌日のつらさ。

1週間後の不安。

「本当にこれで良くなるのだろうか」と思いながら過ごす時間。

仕事へ戻る苦労。

夜眠れない日々。

そして、少し良くなったことに喜びながら、また症状が出て落胆する。

患者にとっては、この「手術が終わってから回復するまで」の時間こそ、とても大切なのだと思います。

患者のつらさを「想像できる医療者」でありたい

私の泌尿器科の主治医も、

「患者の気持ちは、患者にならないと分からないところがあります」

と話していました。

その通りだと思います。

すべての病気や治療を医療者自身が経験することなどできません。

患者さんの痛みを完全に理解することもできません。

しかし、

「この人はいま、どんな思いで家に帰るのだろう」

「次の外来までの数週間を、どんな不安を抱えて過ごすのだろう」

と想像することはできます。

そして、

「何かあったら相談してください」

「この症状はしばらく続くことがあります」

「このくらいの時期から少しずつ楽になりますよ」

と具体的に伝えることもできます。

それだけでも患者さんの安心感はずいぶん違うのではないでしょうか。

2週間経って、改めて思うこと

今回のウロリフト手術では、本当に多くのことを学びました。

手術そのものだけではありません。

手術後の痛み、不安、頻尿、眠れない夜、仕事への復帰、そして少しずつ回復していく喜び。

医師として知っていたことを、患者として経験しました。

患者の気持ちは、患者にならなければ本当のところは分からない。

だからこそ、分からないことを自覚したうえで、そのつらさを想像しようとする。

それが「患者に寄り添う」ということなのかもしれません。

今回の経験を、これからの自分自身の診療にも生かしていきたいと思います。

そして、この体験記が、これからウロリフトや前立腺肥大症の治療を受ける方にとって、

「つらい時期があっても、少しずつ回復していくんだ」

という一つの安心材料になれば嬉しく思います。

まだ私自身の経過も途中です。

次は、1か月後、そしてその先に、

「実際にウロリフトを受けてQOLはどう変わったのか」

を、患者として、そして医師として、率直にお伝えしたいと思います。

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