医師が患者になって感じたこと(その2)

ウロリフト手術を終えて
本日、前立腺肥大症に対する「ウロリフト(UroLift)」手術を無事に終えることができました。
まずは、ご心配いただいた皆さまに心より感謝申し上げます。
たくさんの励ましのメッセージをいただき、不安な気持ちの中で本当に大きな支えとなりました。
ありがとうございました。
腰椎麻酔という貴重な体験
今回の手術は腰椎麻酔で行われました。
最初に麻酔の注射をするときだけは少し緊張しましたが、その後はほとんど痛みを感じることはありませんでした。
麻酔薬が入ると、下半身がじんわりと温かくなり、次第に感覚が薄れていきます。
麻酔科の先生は、氷を皮膚に当てながら、
「冷たいですか?」
と何度も確認されます。
おへその辺りでは「冷たい」と感じますが、少しずつその感覚が下へ下がっていきます。
やがて、「何かが触れている」という程度になり、最後には「本当に触れているのかな」と思うくらい感覚がなくなっていきました。
およそ15分ほどで、麻酔は十分に効いたようです。
医師として知識では理解していた腰椎麻酔ですが、自分自身で体験すると、その変化はとても興味深いものでした。
手術中に聞こえる「カチ、カチ」という音
いよいよウロリフト手術が始まりました。
ウロリフトは、尿道から専用の器具を挿入し、肥大した前立腺を小さなインプラントで左右に引き寄せ、尿道を広げる治療です。


痛みはありません。
しかし、器具を操作するたびに
「カチ、カチ」
という音が聞こえてきます。
一つのインプラントを留置するたびに数回の「カチ」という音。
私は数えていました。
全部で7セット。
術後、担当の先生から
「7本のインプラントを留置しました。」
と説明を受け、「やっぱりそうだったか」と思わず笑顔になりました。
医師という職業柄、つい手術の進み具合を音から想像してしまう自分がいました。
患者から見える景色
手術は約30分で終了しました。
帰りはストレッチャーに乗せられ、病室まで運ばれます。
歩いて手術室へ入り、帰りは天井を見つめながら病室へ戻る。
その景色は、まさに「患者になった」ことを実感する瞬間でした。
天井を眺めながら、ふと思いました。
「もし天井に『お疲れさまでした』『もうすぐ病室ですよ』そんな温かいメッセージがあったら、患者さんは少し安心できるのではないだろうか。」
医療者には気づきにくい、小さな視点かもしれません。
しかし、患者にとっては、そのような心配りが大きな安心につながることを実感しました。
手術室という特別な空間
手術室は清潔で、とても快適な環境でした。
室内は冷房が効いていますが、術者は無影灯の下で防護具を着用しているため、かなり暑い環境なのだと思います。
一方、患者には体温低下を防ぐため、温風で身体を温める装置が使われます。
裸に近い状態で手術を受ける患者にとって、この温かさはとてもありがたいものでした。
こうした細かな配慮にも、改めて感謝の気持ちが湧いてきました。
手術が終わって
現在は尿道カテーテル(バルーン)が入っており、一晩はベッド上安静です。
水分も食事も控え、静かに過ごしています。
「今日は眠れないかな」と思っていましたが、不思議なことに自然と眠気がやってきます。
手術というものは、たとえ低侵襲であっても、身体には確かな負担がかかっていることを実感しました。
下腹部には多少の違和感がありますが、痛みは強くありません。
明日の朝にはカテーテルが抜去される予定です。
そこからどれだけ楽になるのか、とても楽しみにしています。
医師として、そして患者として
海外ではウロリフトを日帰りで行う施設もあるようですが、実際に経験してみると、一晩ゆっくり身体を休めることには大きな意味があるように感じます。
今回、患者になったことで、多くの学びがありました。
検査を待つ時間。
麻酔が効いていく感覚。
手術中の緊張。
ベッドで天井を見つめる時間。
どれも、医師として知識では理解していても、患者として経験して初めて実感できたことばかりでした。
この経験は、これから私が患者さんと向き合う上で、必ず生かされると信じています。
医療とは、病気を治すことだけではありません。
患者さんの不安に寄り添い、その気持ちを理解しようとする姿勢こそが、医療の原点なのだと改めて感じました。
今回の経験を、これからの診療や情報発信に生かし、多くの方のお役に立てれば幸いです。
そして、無事に手術を終えられたこと、支えてくださった医療スタッフの皆さま、励ましのメッセージを送ってくださった皆さまに、心より感謝申し上げます。