医師が患者になって感じたこと(その3)

~術後の不安と、患者の気持ちが分かった夜~
術後の不安・痛みと闘う
ウロリフト手術は無事に終わりました。
手術そのものは約30分。
腰椎麻酔も思っていた以上に順調で、医師としても患者としても、大変貴重な経験となりました。
しかし、本当の意味で「患者の気持ち」が分かったのは、その日の夜でした。
術後は尿道カテーテル(バルーン)が留置され、一晩はベッド上安静です。
最初は尿も順調に流れていました。
ところが、しばらくすると尿が出なくなり、強い残尿感と下腹部の痛みが出てきました。
「もしかして詰まっているのではないか。」
そんな不安が頭をよぎります。
さらに、肛門の奥にも響くような痛みが加わり、じっと横になっていることが難しいほどの状態になりました。
医師としては、血餅によるカテーテル閉塞や膀胱けいれんなど、いくつかの可能性が頭に浮かびます。
しかし、患者になると、その知識以上に、
「このままで本当に大丈夫なのだろうか。」
という不安の方が大きくなるのです。
看護師さんがすぐに対応してくださり、泌尿器科の先生も病室まで来てくださいました。
カテーテルを洗浄し、流れを丁寧に確認していただいた結果、「カテーテルは詰まっていません。大きな問題はありません。」との説明を受けました。
原因としては、術後の刺激や膀胱のけいれん、カテーテルによる刺激が考えられるとのことで、痛み止めを使用しながら経過をみることになりました。
その説明を受けた瞬間、不思議なくらい気持ちが落ち着きました。
もちろん痛みは残っています。
それでも、「大丈夫ですよ」という一言には、薬とは違う大きな力があることを改めて実感しました。
医師は毎日のように患者さんへ説明をします。
「心配ありません。」
「予定どおりです。」
「順調ですよ。」
何気なく使っているその言葉が、患者さんにとってはどれほど安心につながるのか。
今回、自分自身が患者になって初めて、その重みを実感しました。
また、夜間にもかかわらず、迅速に対応してくださった看護師さんや泌尿器科の先生方には、心から感謝しています。
病院では当たり前の日常かもしれません。
しかし、患者にとっては、その一つひとつの対応が「安心」そのものなのです。
今回の経験を通して改めて感じたことがあります。
医療は、病気を治す技術だけでは成り立ちません。
患者さんの不安を受け止め、状況を丁寧に説明し、「大丈夫ですよ」と安心を届けることも、医療の大切な役割です。
今回、患者として過ごした一夜は、私にとって医師人生の中でも忘れることのできない貴重な経験となりました。
この経験をこれからの診療に生かし、患者さんの不安により寄り添える医師でありたいと思います。
そして、この体験が、これから治療を受ける方やご家族にとって、少しでも安心につながれば幸いです。