感謝を伝えに伊勢へ――「縁」に導かれた、夫婦のお伊勢参り

      2026/09/15

今回、妻と二人でお伊勢参りに出かけました。

私はこれまでにも何度か伊勢神宮を訪れていますが、妻にとっては初めてのお伊勢参りです。

「これまで無事に歩んでこられたことへの感謝を伝えたい。そして、これからの人生も見守っていただきたい」

そんな妻の一言が、今回の旅の始まりでした。

振り返ってみると、不思議なくらい、この旅では至るところで「縁」という言葉・出来事に会いました。

私がこれから息子と始めようとしているのも「ENクリニック」。

人と人との縁、その人が本来持っている力を引き出す環境を整えることを大切にしたいと思って名付けた「EN」です。

今回のお伊勢参りは、まさに「感謝」と「縁」を体で感じる旅になりました。

京都から、懐かしいビスタカーで伊勢へ

前日は京都駅八条口近くのロイヤルツインホテル京都八条口に宿泊しました。

翌朝8時10分、京都駅から近鉄特急へ。

乗ったのは、懐かしいビスタカーでした。

京都から伊勢市まで約2時間。揺れも少なく、とても快適な列車の旅でした。

伊勢市に到着すると、まず宿泊先のEN HOTEL伊勢へ荷物を預けました。

実はこのホテル、名前を見た瞬間に「ここだ」と思って決めました。

EN HOTEL。

もちろんホテルの「EN」と私たちのENクリニックは別物ですが、「縁」を大切にしている私には、この名前だけでも何となく今回の旅にふさわしい気がしたのです。

外宮の鳥居をくぐった瞬間、空気が変わった

ホテルから歩いて外宮へ。

伊勢神宮は大きく、外宮(豊受大神宮)と内宮(皇大神宮)を中心としています。

内宮には皇室の御祖神であり、日本人の総氏神ともされる天照大御神、外宮には天照大御神のお食事を司る豊受大御神がお祀りされています。

さらに、それぞれの正宮に次ぐ格式を持つ「別宮」があります。

つまり伊勢神宮は一つの建物ではなく、内宮・外宮を中心に、多くのお宮から成り立つ大きな神宮なのです。

外宮の火除橋を渡り、鳥居の前で一礼。

そして一歩、中へ入った瞬間でした。

すっと体が引き締まる。

これは気持ちの問題なのかもしれません。

しかし、私は伊勢を訪れるたびに同じような感覚を覚えます。

何百年という時間を生きてきた大木に囲まれ、その中へ吸い込まれるように歩いていく。

まだ暑さの残る9月でしたが、木々の下は驚くほど涼しく、午前11時とは思えない爽やかな空気でした。

神様には「お願い」ではなく「ありがとう」を

今回、改めて感じたことがあります。

神社は、お願い事を並べに行く場所ではない。

もちろん願いがあってもいい。

でも、その前に伝えたいことがあります。

「ここまで無事に来ることができました。ありがとうございます」

人生には本当にいろいろなことがあります。

一人でここまで来たわけではありません。

家族がいて、仲間がいて、仕事を通じて出会った人たちがいて、多くの「縁」に支えられて今があります。

だから私は、二拝二拍手一拝の中で、まず感謝を伝えました。

そして、

「これからも自分らしく、精いっぱい生きていきます。どうぞお見守りください」

と。

今回、外宮では御祈祷もお願いしました。

息子のこれからの学業、卒業試験、そしてその先の医師国家試験。

さらに、家族で力を合わせながら準備を進めているENクリニック。

お願いしたいことはいろいろあります。

けれども、その根底にあったのは、

「ここまで来ることができたことへの感謝」でした。

妻と並んで御祈祷を受け、名前を読み上げていただき、お祓いを受け、お神酒とお札をいただく。

静かで、心に残る時間でした。

昼は「豚捨」の牛丼

外宮を出ると、ちょうどお昼。

入ったのが、何とも印象的な名前の「豚捨」です。

名前は豚ですが、名物は牛肉。

牛丼をいただきました。

これが実に美味しい。

歩いた後だったこともあり、あっという間にいただきました。

お伊勢参りは心だけでなく、食欲もしっかり満たしてくれます。

内宮へ――五十鈴川を渡る

外宮前からバスで内宮へ。

土曜日ということもあり、かなりの人出でした。

宇治橋を渡ります。

下には五十鈴川。

水の流れと木々の緑を眺めながら橋を渡り、鳥居をくぐる。

すると外宮と同じように、また気持ちがキュッと引き締まるのです。

正宮へ向かい、天照大御神の前で二拝二拍手一拝。

ここでもお願いを並べるのではなく、

「ありがとうございます」

と感謝を伝えました。

にぎやかなおはらい町から、静かな月讀宮へ

内宮を参拝した後は、おはらい町・おかげ横丁へ。

赤福、伊勢うどん、海産物、お土産屋さん……。

まさに一大観光地です。

活気があって楽しいのですが、とにかく人、人、人。

そこを抜けて、内宮の別宮である月讀宮(つきよみのみや)へ向かいました。

タクシーに乗ろうと思ったのですが、なかなか見つからない。

「もう歩こうか」

ということで、妻と二人で歩き始めました。

すると月讀宮のすぐ前で、思わぬものを見つけました。

「Enn.cafe」

「EN」に、Nがもう一つ。

思わず妻と顔を見合わせました。

「また縁だね」

喉も渇いていたので入ってみると、女性お二人が温かく迎えてくださいました。

ENクリニックを始めることや、「縁」を大切にしていることをお話しすると、

「近くだったら行きたいんですけどね」

などと言ってくださる。

コーヒーゼリーとラテをいただきながら、しばらくお話をしました。

不思議なことに、私たちが入った後から次々とお客さんが入ってきました。

そんなことまで「縁」に思えてしまいます。

月讀宮――人の少ない森の中で

カフェを出ると、月讀宮はすぐそこです。

月讀宮には月讀尊をはじめ、四つのお宮が並んでいます。

内宮の喧騒が嘘のようでした。

人影もまばら。

木々に囲まれた参道をゆっくり歩きました。

しかも、それまでの霧雨が止み、ふっと青空まで見えてきたのです。

ここでも、ゆっくりと感謝を伝えました。

内宮では人が多くて落ち着いて選べなかったので、月讀宮で夫婦のお守りをいただきました。

これも今回の旅の良い記念になりました。

戻ってきてくれたタクシー――これも「縁」

月讀宮を出てホテルへ戻ろうとしましたが、タクシーが見当たりません。

バスで帰ろうかと思っていた、その時です。

一度通り過ぎたタクシーが、わざわざ戻ってきてくれました。

運転手さんは中井さん。

とても親切な方でした。

道中、伊勢のことをいろいろ教えてくださり、

「せっかくだから、もう一つ別宮に寄っていきませんか」

と案内してくださったのです。

しかも私たちが参拝している間、メーターを止めて待ってくださる。

こういう人との出会いこそ、旅の醍醐味です。

その後、外宮の別宮である月夜見宮(つきよみのみや)にも立ち寄りました。

同じ「つきよみのみや」でも、内宮の「月讀宮」と外宮の「月夜見宮」では漢字が違います。

これも伊勢ならではの面白さでした。

ホテルに戻り、夕食は「伊勢網元食堂」へ。

新鮮な魚料理と地元のクラフトジン。

伊勢海老は翌日の宿のお楽しみに残しておきました。

長い一日でしたが、心地よい疲れでした。

翌朝、霧雨の外宮へもう一度

翌朝。

窓の外は霧雨。

それでも、

「もう一度、外宮へ行こう」

と妻と出かけました。

前日の昼間とはまったく違います。

人の少ない早朝の外宮。

霧雨に濡れた木々。

静かな参道。

前日は人混みもあって十分に回れなかった別宮にも足を運び、多賀宮・土宮・風宮をゆっくり参拝しました。

昨日とはまた違う伊勢がありました。

これで今回のお伊勢参りは一区切り。

何とも言えない充実感がありました。

二見へ――夫婦岩と、たくさんの蛙

ホテルをチェックアウトし、JR参宮線で二見浦へ。

荷物は駅近くの観光案内所に預けました。

霧雨の中、傘を差したり閉じたりしながら海へ向かって歩きます。

途中には、昔ここが伊勢参りの旅人たちでにぎわった保養地だったことを思わせる建物も残っています。

そして二見興玉神社へ。

境内に入って気づいたのが、

蛙、蛙、また蛙。

あちらこちらに蛙があります。

これは偶然ではありません。

二見興玉神社の御祭神の一柱である猿田彦大神のお使いとされる「二見蛙」です。

「無事にかえる」「若がえる」「お金がかえる」。

そんな願いを込めて奉納されてきたそうです。

そして、いよいよ夫婦岩へ。

二つの岩を結ぶ大注連縄。

その向こうには伊勢の海。

二見興玉神社では、沖合にある猿田彦大神ゆかりの興玉神石と、日の大神を遥拝する鳥居の役割を夫婦岩が果たしています。

海は曇っていましたが、幸い大きく荒れることもありませんでした。

妻と二人、しばらく海風に吹かれながら眺めました。

今回、妻にとって初めてのお伊勢参り。

最後に夫婦岩まで来られたことにも、何か意味を感じました。

参拝後は近くで一休み。

餡をのせたお餅とお茶、そして私の好きな抹茶氷。

歩いた後の甘いものは格別です。

そこから鳥羽へ向かいました。

鳥羽水族館については、また別のブログで書きたいと思います。

お伊勢参りは「お願い」ではなく「感謝」の旅だった

今回のお伊勢参りを振り返ると、一つの言葉に行き着きます。

縁。

EN HOTEL。

月讀宮前のEnn.cafe。

偶然戻ってきてくださったタクシーの中井さん。

妻と二人で歩いた参道。

そして、ここまでの人生で出会ってきた多くの人たち。

これから始めるENクリニックも、結局は人と人との「縁」をつなぐ場所にしたいのだと思います。

タクシーの運転手さんが、こんな趣旨のことを話してくださいました。

「お伊勢さんには、誰もが来られるわけではありません。ここまで来られたこと自体をありがたいと思ってください」

心に残りました。

私は「選ばれた人」というより、

「ここへ来られるだけの多くの縁に支えられてきた」

と受け止めたいと思います。

だからこそ、神様に伝える言葉は、

「これを叶えてください」

だけではなく、

「ここまで来られました。ありがとうございます」

なのだと思います。

そしてもう一つ。

「まだまだこれからです。自分らしく精いっぱい生きていきます。これからもお見守りください」

妻と二人、そんな気持ちを新たにできたお伊勢参りでした。

霧雨もありました。

たくさん歩きました。

人混みに疲れた時間もありました。

それでも、振り返れば天候にも人にも恵まれた旅でした。

何日も伊勢にいたような、不思議な充実感があります。

お伊勢参りは、写真だけではなかなか伝わりません。

鳥居をくぐった瞬間の空気。

大木の間を歩く感覚。

五十鈴川の水音。

静かな別宮。

そして、旅の途中で出会う人たち。

ぜひ一度、自分の体で感じてみてください。

お願い事をたくさん用意する必要はありません。

まず一言、

「ここまで来られました。ありがとう」

それだけで、お伊勢参りの景色が少し違って見えるかもしれません。

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